Memome

 白いフリルエプロンと。
 紺色のドレスを揺らし。
 涙を浮かべた君に膝をつく。
 想像よりも可愛くて。
【継続の大切さ】
(銀鈴檻/カズタカとリブラス

 勢いだけで生きているように見える奴もいるものだ。
 カズタカは住居の庭にて、杖を水平に構えているリブラスを眺めている。木に寄りかかり、腕を組みながらも視線はそらさない。
 すう。リブラスが深く細く息を吸う。
「僕は呼び出し君はなく極楽鳥が飛び貫いては紺空を裂いて現れざるは天階の入り口に立つものよ其のために失われたのは星の間を賭ける狐の尾がなが」
 これは詠唱ではない。ただの発声訓練だ。聴いたものによっては「嘘だろ」と笑いだすほどに、気の遠くなる一繋の魔術に関するだけの。
【春の訪れはいつも君と】
(銀鈴檻/リンカーとネイション)

 春が来た、と貴方は微笑む。
 吹き付ける暖かな風を頬に受けて、また、道端にほころび始めた花を見つけて、その一つ一つに尊さを見つけ出して芽生えの季節が訪れたことを喜ぶ。
 リンカーが冬の終わりに気付くのは、ネイションが春と再会した瞬間だ。
 あと十回は、そうなればよいと思うほどに。
【とびたい】
(銀鈴檻/ハシンとカズタカ)

 ハシンが急に言い出した。
「走り高跳びがしたい」
「勝手に跳んでくれ。そうして華麗に判を押してくれ」
 書類が積まれているわけではないが、決済が必要な書類がある。しかしそれらはハシンの一存で承諾できることではないから、いまは待っている最中だ。
 つまりは暇だからこその発言だ。理解しているカズタカの反応は素っ気ない。
「平和なのは良いことだけれど、たまに困難も欲しくなる」
「それをこっちに振るな」
 後片付けに手を焼くのは、いつもカズタカになる。
【たとえば、と口にする君が】
 (千晶推参/鳴と至)

 また言い出すな、とすぐにわかった。
 古めかしい喫茶室内にある赤いソファに座り、至は紅茶を口に運ぶ。コーヒー派だと思われがちだが、至は紅茶を愛飲していた。
「たとえば、僕と至が出会わなかったらどうなっていただろうね」
「それは俺にとって大きな曲がり角だな。鳴がいないなんて、俺の人生の損失だ」
 たったそれだけで向かい側に座る君は笑う。
 嬉しいのはわかるが、大袈裟だろうに。