【たとえば、と口にする君が】 (千晶推参/鳴と至) また言い出すな、とすぐにわかった。 古めかしい喫茶室内にある赤いソファに座り、至は紅茶を口に運ぶ。コーヒー派だと思われがちだが、至は紅茶を愛飲していた。「たとえば、僕と至が出会わなかったらどうなっていただろうね」「それは俺にとって大きな曲がり角だな。鳴がいないなんて、俺の人生の損失だ」 たったそれだけで向かい側に座る君は笑う。 嬉しいのはわかるが、大袈裟だろうに。 一日一物語 2024/04/24(Wed)
(千晶推参/鳴と至)
また言い出すな、とすぐにわかった。
古めかしい喫茶室内にある赤いソファに座り、至は紅茶を口に運ぶ。コーヒー派だと思われがちだが、至は紅茶を愛飲していた。
「たとえば、僕と至が出会わなかったらどうなっていただろうね」
「それは俺にとって大きな曲がり角だな。鳴がいないなんて、俺の人生の損失だ」
たったそれだけで向かい側に座る君は笑う。
嬉しいのはわかるが、大袈裟だろうに。