プランダラ 18巻感想

【あらすじ】
 リヒトーと時風の「相手の幸せを願っている時」にだけ行われる喧嘩は、殺し合いは続く。二人は互いに自分が殺されることを願って、戦っていた。
 戦闘の前に、時風はクローンであるアインスに「僕と離人と陽菜……幸せになるべきは――」と問いかけた。
 一度は地に伏すが、再び立ち上がるリヒトーと時風。二人のどちらかを助けるために動いた道安を止めたのは、ジェイルだった。
 そして、二人を止めるために陽菜は行く。
(68話 死ぬべきは誰)

 陽菜をリヒトーと時風の下にたどり着かせるために協力をして道を作る道安とジェイル、そして心撃でペレがサポートをする。
 だが、陽菜の進む速さではリヒトーと時風の戦場には届く前に殺される。
 それでも陽菜は進んだ。ある少女の力を借りて、リヒトーのところにたどり着いた。
(69話 愛する者を殺せば)

 陽菜と共に来たアインスの言葉により、時風は目を覚ました。
 これで休戦だと思った瞬間に、シュメルマンが姿を現す。シュメルマンはクローンたちに投与した薬によって理性を奪い、時風に過去のリヒトーと同じ選択を迫らせる。
 それに怒ったのは、リヒトーだった。
 そして目の前にいるシュメルマンはかつての「先生」ではないと告げる。
(70話 見逃してくれよ)

 いままで裏切っていたと思っていたシュメルマンはクローンだった。示唆される本物のシュメルマンの存在、そして姿を見せた、これまで人から奪い続けた者。
 「フィレンダ(欠乏)」。 
(71話 通信)  




【感想】
 久しぶりのプランダラ感想です!
 これまでも書きたいなあとは思っていたのですが、なかなか実行に移せませんでしたがひたすら熱い展開の十八巻だけは、書きます! 書かせていただきます。

 今回のメインは時風と陽菜の親子、そしてシュメルマンとリヒトーの親子が対照的な図となっていました。
 愛があるからすれ違った、時風と陽菜。愛があるから見抜くことのできた、シュメルマンとリヒトー。

 
その時風に関してですが、今回もひたすらに辛かった。理性が強くて正義感があるだけ、そして人から愛されいたからこそ自分も背負いたかった荷物をその人たちに奪われて、大切な人たちが苦しむ光景を見つめているしかできなかった。
 リヒトーに廃棄戦争で殺させた代償とばかりに、アビスで大切な人たちを手にかけ続けなくてはならなかった修羅の道を歩む辛さは、いま書いていても胸が痛くなります。真面目だからこそ、放り投げて壊れることもできなかったのでしょう。
 そして、友人のクローンであったとしても割り切れないで愛してしまう。
 時風はどうしたらよかったのか。これに関しては幸福になるように努力するしかないと私は考えています。なぜなら、時風は多くを殺めましたが、同時に幸福になれと願われてもいる。だったら、苦しさを噛みしめながら幸せに、陽菜と離人の三人で、さらに他の仲間たちのところで救われてもらいたい。私は強く、願いました。

 
 陽菜ちゃんは69話のリヒト―と時風を止めるために行こうとする、「私のカウントはあなたに出逢うためだけに…歩き続けた数…!」の強さを見て涙が止まらなかったです。リヒトーの笑顔を思い浮かべた瞬間の、力強く泣きながら進むコマは綺麗でした。
 陽菜ちゃんは物理で戦うヒロインではなく、みんなを励ませるヒロインで、同時に最後まで歩くことを躊躇わない強さを持った子なのです。
 プランダラの第一話が彼女の旅路から始まっていたように、成長して、リヒトーのところにたどり着く。
 そこをリフレインさせるこの演出の憎さは素晴らしいとしか言えません。
 陽菜ちゃんがリヒトーのところにたどり着けたのも、父である時風がアインスに優しさと言葉を与え続けたための結果だというところも自然な伏線となって良かったです。
 もう、リヒトーと陽菜ちゃんは離れないでください。幸せになってください。
 あと時風のところで書き忘れたのですが、陽菜ちゃんへの愛情を語るモノローグの優しさが、語り口がとても良かったです。

 
 私の推しのジェイルは、毎回おいしいところをかっさらっていって「もー!」とにまにましながら、これもまた69話の場面ですがジェイル・道安・ペレの三人と特務で協力しながら道を作る展開の熱さに、かっと燃えました。
 水無月先生の協力展開と裏切りは、毎回「わかっていたのにやられた」となります。ですが、今回は陽菜ちゃんがリヒトーのところにたどり着けたので、救われました。

 
 そして最後。
 いままで何度も登場していた謎の男はあなたか! 「フィレンダ!」という気分でした。
 最初から怪しいとは思っていましたが、というかリヒトーに注射器を何本も刺している段階で悪役決定でしたが、まさか『fate/Grand Order』の人類悪レベルにまでなるとは。
 この凶悪で強大な敵に、どう立ち向かうのか。
 考えてみましたが、アタッカーは五人の撃墜王という駒は揃っているのにジェイルも加えて大丈夫そうです。あとはゲフェングニスや特務、またアルシアの人たちがどこまで自分たちを含めて守れるか、そしてもしフィレンダに攻撃無効があったらそれを中和できるかが鍵かもしれないですね!
 ただの予想です。プランダラは展開がどうなるか、蓋を開けないとわかりません。

 

 18巻はとにかく熱かった。面白かった。顔芸もすごかった。
 水無月先生の作品では『私の救世主様』が履修済みだったのですが、さらに風呂敷を広げた『プランダラ』がこれからどういったたたみ方をされるか。さすがにもう風呂敷は広げないと思うのですが……広げたとしても、終わりまで追いかけていきます!

 それでは。ここまでお読みくださりありがとうございました。


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