プランダラ21巻(最終巻) 感想

あらすじ
 
 ―――そうして、一人の英雄は父親を救い、一人の王が立って戦争は終わりました。
 世界中が幸せでありますように。


感想
 
 『プランダラ』、ついに完結です。
 私は四巻くらいからこちらの作品を追いかけ始めましたが、初めてこの作品を読んだ日が遠い昔のようであり、ここまで一緒に歩けたことに安心しています。読むきっかけになったのは『Fate/Heavens feel』の付録の間藤桜ちゃんのクリアファイルが欲しく、雑誌を購入して「水無月先生……懐かしいなあ」ぺらぺら「面白い!」となった瞬間であることは覚えています。
 途中から世界が広がり、毎巻登場キャラクターも増えていき、回収し切れていない伏線も沢山あるでしょうが、それでも「幸福な現在」に辿りつけたと私は信じています。
 細かい伏線など全てを吹っ飛ばす『これで良かった」と思える終わりを描いてくれたこと。私は水無月先生にここまで描いてくださったことに感謝していますし、物語というものはそれでも良いのではないのでしょうか。綺麗に畳み終えるだけではなく、美しく畳んで心を震わせることも大事だと。
 
 さて、いきなり締めにかかっていましたが21巻の感想です。

 
第80話「全世界の敵」
 
 タイトル通り、全世界の敵はシュメルマン=バッハ先生です。
 からくりとしては時間遡行の能力をシュメルマン先生も持っていました。その結果、何度試してもAクラスの生徒たちを救えないと知り、今回までの計画を組み立てます。自分が全世界の敵となり、リヒトーを英雄とする筋書きを。
 その一番の成功要因は陽菜ちゃんとリヒトーが無事に出会える世界へと舵をきれたからかなあと思いつつ……いや、全てのバロットはシュメルマン先生から生まれているのですから、ナナさんが持っている能力をシュメルマン先生も持っていて当然じゃないか! この流れは当然じゃないか! と自分の読みの甘さに悔しくなりました。
 そこからシュメルマン先生は「国境があるから人類は争いあう」と語り、だから完全なファンタジーではなくて現実世界を舞台にしたのかとこれまた納得。ファンタジーは言うなれば現実世界の輸出でもありますから、ファンタジーに現実の概念を持ち込むよりも現実世界での争いも組みこんだ方が説得力は生まれますよね。
 そうしてシュメルマン先生はリヒトーに、また全世界の人に自分の命を奪うように煽りますが……ここがもう切なかったです。
 絶望の果てじゃないのですよ。希望の結果として、せめて自分を息子に終わらせてもらいたいと願い、英雄に未来を託したかった。
 大好きです、こういう人。


第81話「親子」

 この回で言いたいことは一番に……ジェイル王最高! ということです。
 リヒトーとシュメルマン先生の戦いはリヒトーの説得とエリン補佐官の割り込み中継によって無事、矛を収めることになりました。煽られていた人たちも真実を知り、冷静さを取り戻します。
 そして英雄であるリヒトーの推薦によって、ジェイルが王になることに。
 この流れは最高でした。
 ジェイルは不器用でしたり頑固でしたり、融通のきかないところもありますが絶対に折れない信念があります。ナナさんに支えられて、いい王様になってくれるでしょう!
 最推しが輝いていて嬉しいです 

 また、戻りますがこの話にあったシュメルマン先生の「大人が責任を取らないといけない」という言葉は改めて大人になると、響きますね。
 もしかすると子ども達の未来や希望は貧困や差別によって『プランダラ』の物語通りに進むかもしれない。そのときに、やり直せるチャンスがないところまで追い詰めてしまわないか。
 そうしないためにも、いまの諸問題から逃げてはいけないなあと、未熟な大人ながらに思います。
 また『プランダラ』ではジェイルという人が冠を戴いて王政に向かいましたが、私たちの世界はそちらの道に向かって歩けないでしょう。権力というものをに対して好ましい感情を持ちにくい風土ができあがっていますし、そこまで一人に一任できるカリスマのある存在もおそらくは誕生しませんし、してはならないです。
 皆が責任を取れるように。皆が『プランダラ』で描かれた略奪者にならないように。
 分け合えるようになる。そのための豊かさを築きあげていかなくてはならない。
 
 それが描かれているのが、最終話だと信じています。


第82話「平和で幸せなつまらない世界」

 ここに至るまで八十一話もかけて、たどり着きました。
 バロットは失われましたが、代わりに人は手を携えて生きていくことを手に入れられました。
 めでたし、めでたし。

 これ以上ないほどに救われるところは救われる終わりで、感想を書こうとしても胸がいっぱいで何も書けません。
 最後の演出である、リヒトーとジェイルが拳でぶつかりあい、その音をシュメルマン先生が聞いて、リヒトーと陽菜ちゃんの子を抱き上げる。
 ここでもう涙が止まりませんでした。
 失ったものは多くあれど、手に残るものはある。新たに生まれるものもある。
 

 諦めて、生きていたらいけないんです。
 最初の頃のリヒトーの諦念は陽菜ちゃんとの再会で動き出して、歪だった世界は美しさを取り戻しました。
 これは物語だからこその幸福かもしれない。
 だけれど「平和で幸せなつまらない世界」すら手に入れなくて、世の中を斜に構えてどうする!
 そういった励ましを『プランダラ』からはもらいました。
 表紙である、リヒトーと陽菜ちゃんの子らしき「リナ」ちゃんと道安さんと水花さんの子らしき「ハナトラ」さん。
 彼らが幸せで、旅立てる世界であることを願いつつ、最後のページを閉じました。

 『プランダラ』完結おめでとうございます。
 そして、いままでありがとうございました。




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