THEビッグ・オー 第一話「Roger The Negotiator」

第一話 「Roger The Negotiator」

 パラダイムシティという記憶喪失の街でネゴシエイターをしているロジャー・スミスの物語。
 第一話の依頼はソルダーノという富豪から娘の「ドロシー」を取り戻してもらいたいというものだったが、救出した少女はアンドロイドだった。その後、パブで馴染みの情報屋から話を聞いて自宅に戻ると執事のノーマンから来客がある旨を告げられる。その来客こそ最初のアンドロイドの「ドロシー」で、ロジャーは彼女から守って欲しいと依頼された。

 といったところが大体の導入ですが、この作品の魅力は世界観とニヒル。そしてモダンな雰囲気だと思います。
 最初にも書いたとおり舞台は記憶喪失の街「パラダイムシティ」。パラダイムという単語自体に「時代を支配する者の考え方、認識の枠組み」という意味がありますので、この街はある考え方や枠組みに支配されている街だと言えます。
 その考え方のキーワードとなるものが「記憶」でしょう。ロジャーが語るとおりに記憶がなくとも文化がなくとも、いまある便利な道具が使えたら人は生きていけるとあります。過去に執着するのは老人だけだとも。
 この時点では過去に何があったかは全く明かされていませんが、風景を見ていると現在を普通に暮らしている人々が描かれています。装飾は十九世紀くらいのモダンな雰囲気が強いように見えました。
 その中で、ロジャー・スミス。主人公であるロジャーはどういった人物か。
 彼は『ビッグ・オー』という作品において、パラダイムに属さない者といった印象を受けました。軍警察を辞めて、ネゴシエイターという仕事をしている。そのきっかけなどはまだわかりません。一話で伝わってくるのはプロ意識が高くて少し怒りっぽく、女性に優しいですが紳士ではないかなといったところです。
 私は『スーパーロボット大戦Z』でロジャーを知って、その性格と振る舞いを気に入り、『ビッグ・オー』を見始めたのですが、彼はなかなかユニークなキャラクターです。でも、この完全無敵の紳士ではなくてちょっとさかしいところのあるロジャーが好きです。この1990年代のちょっと間の抜けた主人公の方が、見ていて気が抜けるような気楽さがあり、親しみやすいです。あと純粋に体格は良いのに、肩幅が大きくて足がスリムといった『ビッグ・オー』全体に通じる粋なフォルムが好きです。
 他にノーマンやダストン中佐といった脇を固める魅力的なおなじみキャラクターのなかで、一際特殊なのがドロシーです。女性のアンドロイドですが、場面場面の動きが人ではなく機械だと感じさせる描写なのが凝っているなあと、見るたびに思います。
 あと淡々としながら「あなたって最低」とロジャーたちにずばずば言うところも好きです。ロボットアニメでクールなヒロインとなると綾波レイを意識したキャラクターなのかもしれませんが、ドロシーは徹頭徹尾アンドロイドでありながら思いやりを兼ね備えたキャラクターとして描かれていて、好きです。矢島さんの声だと最初は気付きませんでした。

 さて、そんな第一話ですが全体的に色あせた色調で進んでいきます。
 最初は交渉に赴くロジャー。取引の金が入ったトランクを足で蹴飛ばすのが格好良いです。そして交換されたのが、アンドロイドのドロシー。依頼主であるソルダーノは「話が違う!」とかんかんなので、ロジャーはトランクを取り返しますが……それのまあ大胆なこと。トランクが空を飛ぶ。哀れお金は空を舞っていきました。
 ロジャーは街に戻ります。このときに語られる、ロジャーの信条みたいなモノローグが格好良くて刺さるのです、私には。
 行きつけのパブに情報屋とのやりとりと、古風な浪漫を漂わせながら、ロジャーの家、軍警察といった重要な場面を要所にちりばめて話を編んでいき、そして……ビッグ・オーのバトルまで持っていきます!
 スーツで戦うというのがもうクールで熱い展開ですよね。最初に見た瞬間に痺れました。いえパイロットスーツもプラグスーツも独自の魅力がありますが、私は普段着のままロボットで戦うというのが大好物です。
 ビッグ・オーを動かす指先の動きなどが本当に綺麗でフェチ心をくすぐられますね。

 ビッグ・オーは特に苦戦もせずに殴って殴ってドロシーワンを倒すのですが、その下にはなぜかドロシー(アンドロイド)がいました。崩れていくドロシーワン。潰される助けに向かったダストン中佐とドロシー。
 と、いうところで続きます。
 次回も楽しみですね!

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