プランダラ 20巻感想

【あらすじ】

 陽菜の機転により、口減らしのために亡くなるはずだったAクラスの全員は生きていたことが明らかになった。
 窮地に陥っていたリヒトーを助けに来た同級生たちに、変わらずリヒトーは「殺すな」と命じた。
 そして再開された、フィレンダとの戦い。クローンはAクラスが相手をし、道安と園原がフィレンダの能力を封じて、時風とジェイルが道を開く。
 圧倒的な力を持つはずのフィレンダだったが、ペレに思考を読まれて攻撃が通じない。
 一人対多数と戦況は変化したフィレンダと、リヒトー。
 孤独に憎悪をたぎらすフィレンダを前にして、リヒトーは陽菜に告げる。
 「ボクと……手を繋いでほしい……」

(第76話 フェア)

 これまで陽菜の差し出す手を振り切ってきたリヒトーだった。
 だが、今回はかつての自分と同じく一人きりのフィレンダを殺さず、孤独から解放するためにカウントを引き上げる覚悟を決めた。そのためには、自分を追いかけ続けてくれた、陽菜が必要だと話す。
 「この先一生、ボクと手を繋いでくれますか……?」
 そうして陽菜はリヒトーに寄り添うことを決めた。
 リヒトーの髪の色も黒に戻り、シュメルマンの遺伝子を己のものにした。
 そして怒りに震えるフィレンダに手を差し伸べるが、フィレンダは拒絶し選択を突きつける。
 フィレンダを殺すか、陽菜を捨てるか。

(第77話 まだ子供)

 フィレンダが突きつけた選択にリヒトーは懊悩する。
 殺されるまで、全てを殺し尽くす選択をしたフィレンダを前にしても殺すことを選べないリヒトー。緊迫する状況の中、フィレンダに安らぎをもたらしたのはアランだった。
 アランは語る。シュメルマンがフィレンダの救いを望んでいたということを。
 フィレンダも語る。かつて学校で、自分は満たされていたが自分でそれを壊してしまった。
 そして、フィレンダは命を終わらせた。
 リヒトーたちは楽園の壁の向こうに足を踏み出す。そこにはかつて過ごした「第13特設軍学校」があった。

(第78話 救う方法)

 Aクラスの教室の扉を開けると狂気に囚われていないシュメルマンが待っていた。
 リヒトーは席に着いてシュメルマンに絵本を読んでくれるように頼む。しばしの平穏が続いていたが、夕暮れを迎えると、卒業式が始まる。
 地上〈アビス〉でも育つ力強い希望の種をAクラスの生徒達は、シュメルマンから温かな言葉と共に託された。
 リヒトーを頼まれた陽菜。シュメルマンの真実を渡されるペレ。
 そして、「全世界の敵=シュメルマン」を倒すことこそ卒業試験だと、リヒトーは告げられた。

(第79話 卒業式)

【感想】
 書くのが遅れてしまいましたがついに、次が最終巻です。次が最終巻……これまで、長かったですね。
 
 今回の話は最後の障害であるフィレンダ中尉との結末が描かれましたが、リヒトーを一段階押し上げるにあたって、またこの物語が終わりを迎えるために禊の死が必要だったことがやりきれません。
 前回ではフィレンダ中尉が迎えられる展開もわずかに考えましたが、いままで仲間達が合流してきた展開とは違い、それだけフィレンダ中尉が生きることは「許されないこと」であり、それ以上に「許されることが救いにならないこと」だったのだと痛感しました。
 ただ、それでもリヒトーがフィレンダ中尉の孤独を理解して心は迎えにいってあげられたことだけは、確かなことだと信じています。
 孤独から解放されたからこそ、フィレンダ中尉は生きて償うのではなく、死の優しさを選択した。壊れた心だからこそ耐えきれなかった優しさに、せめてアラン大尉が語った「賽の河原の鬼から子供たちを守る」ことができますように。

 Aクラスの皆が「生きている未来に変わった」ではなく、陽菜の機転によって「三百年前から生きていた」という描き方をしたのは流石だと思いました。
 主人公たちだけが生き残って世界を立て直すのではなく、メインではないけれど大切なキャラクターたちの生存回収してくださったことは、嬉しいです。
 そこからシュメルマン先生との再会につながりますが……ここは予想通りでしたね。シュメルマン先生は、Aクラスの全員が生きていたことは知っていたのでしょうか。おそらく、知っていたと思います。だからアビスでも育つ種を頑張って研究していたのだと。
 そうなると一番悲しい気持ちになるのは時風のことを思うとなんですけどね……彼はAクラスの皆に残されて、介錯し続けていた傷は深いです。辛いです。がんばりました。
 せめてアビスに落とされた月菜さんと、最後に再会して欲しいです。時風さん。

 さて、最終巻でしたらあと描かれるのはリヒトーとシュメルマン先生の戦いですね。
 どこまで伏線が回収されるかは考えず、終わりを静かに見届けたいと思います。
 シュメルマン先生も、フィレンダ中尉の救いを望みつつ果たされなかったのですから、生きていられる可能性は五分五分です。
 ただ、リヒトーと陽菜の子を、シュメルマン先生が抱き上げられる未来が待っていたら。

【ときめき】
 ここはやっぱり、リヒトーの告白ですよね!
 陽菜ちゃんがずっと追いかけて、そのたびに振り払われてきたからこそ、ようやく手を繋げたことが、一生繋いでいてもらいたいと願われたことが嬉しいです。
 プランダラはバトルファンタジーでありながらラブコメだとも思っていますので、ラブがたまに出てくると気恥ずかしいですがきゅんときます。
 
 それでは、最終巻。待ちましょう!

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