<香魚の記>
天井のない迷宮を歩くあなたは空を見上げることも思い出せずにいた。
先ほど通った場所だとは気付いた。同じ場所を歩くことを続けていった。
新しい道を開拓しないあなたに神は告げた。
「どうしてお前は苦難の場所へと戻っていくのか。一度味わった苦痛を何度もその足で踏みしめようとするのか。それは賢き者のすることではない。愚か者の慰みだ」
「ああ、私の神ではない、それでもまごうことなき神よ。私は自身に罰を与えているのです。幾重も巡る、終わりなき悔悟こそが私に相応である居場所なのですから」
神はあなたに己の罪を語るように命じた。
あなたは口を閉ざし、また迷宮を杖をつくこともなく歩き始めた。