変奏曲より紡がれし明日への希望 第十三話

 クシクは自身が知っている、サフェリアが亡くなった時のことを全て話した。
 落ち着いた顔で聞いていたサレトナは深々とクシクに向かって頭を下げる。
「お辛いことを思い出させてしまい、申し訳ありません」
「いえ。私は大丈夫。でも、カクヤは」
 その後の扱いがひどいものだった。
 医者や司聖は丁寧にサフェリアの遺体を確かめた。急に病の発作が起きたのか、それとも何らかの要因が関わっているのかなど、可能性を一つずつ潰していった。結果、カクヤが直接的な関与をしたのはありえないと断言された。
 だが、間接的にはサフェリアがこの世を離れた原因であるとも、ほのめかされた。カクヤはサフェリアが亡くなったことについて何も言わなかった。そのために、カクヤはサフェリアを追い詰めたのだと周囲は認めた。
 カクヤ以外は証言できない、空白の百八十秒のために、カクヤはルリセイにおいて居場所を失った。
 それから後のことは言葉にするには惨すぎた。一つの街において、排他されることの苦痛は容易に想像できるものではない。友と呼べる存在は離れていき、導くはずの大人には嫌悪され、罪人の烙印だけが刻まれた。
 クシクにしてみれば、カクヤが淡々と二年もの間、ルリセイで過ごしていたことすらいまは信じられないのだ。カクヤ自身は何も変わらずにサフェリアを悼みながら時を重ねていた。だが、それは。
 ただの無気力だったのかもしれない。
 今日の、サレトナやタトエと笑うカクヤを見て、久しぶりに本来のカクヤを取り戻した気分にすらなれたのだから。
 クシクはそれらを話すことができなかった。沈黙を続けた後に、明るく切り替えて言う。
「そろそろ、眠りましょうか」
「はい」
 今度こそ消灯の合図を出して、眠りに就く。
 サレトナも布団を被った気配がした。クシクも目を閉じる。
「クシクさん。今日は話をありがとうございました。でも、それでも」
 まだ、目は開けない。
「それでも、私はカクヤのことが大切です。忘れないでください」
 胸の奥底に溜まっている苦いものが、少しだけど、崩れて砂になって溶けていく。サレトナの言葉は清涼な水だった。
「ええ。ありがとう」
 今日はゆっくり眠れそうだと、クシクは深く呼吸をする。

>第八章第十四話



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