鳴り響け青き春の旋律よ 第九話

 久々に、一人きりの帰り道を歩く。
 カクヤはセイジュリオからロウエン広場へ進む道を歩きながら、あと残り一回しかない、今日の戦闘実習について思い出していた。
 思い出すだけでも無残な結果だった。

 クロル率いるスィヴィアと、カクヤがリーダーを務める無音の楽団が練習試合をした。二日前のクロルの宣言通りだ。
 修練場のある別建ての学舎を舞台とすることに決められたが、結果はすぐに出た。
 無音の楽団はあっさりとスィヴィアに負けてしまった。
 ルールは各自が与えられて所持することになった輝石を守り切ることだったが、カクヤたちはソレシカ以外が輝石を奪われて終わった。
 他のチャプターたちとは別の場所に移動して、修練場の上の階で感想を言い合うことになった。その時もクロルは容赦なく詰めてきた。
「カクヤ。これは授業だ。しかし、各自の評価に関わるのと、緊急時という実践を想定して行われている。その上で聞こう。君には、勝つ気はあるのか? 死なない覚悟はあるのか?」
 ある、と言いたかった。だけれども答えられなかった。
 何を言っても、言い訳にしかならないということも理解していたためだ。
 以前に清風と話をした。その際に、リーダーであるのならば、仲間全員のために相手に配慮する余裕など無くした方が良いとも言われた。
 だけれど、その一歩がカクヤはどうにも踏み切れない。
 うつむかず、真っ直ぐに見返すが何も言葉にしないカクヤに焦れたのか、クロルの言葉は厳しさを増していく。
「負けるという結果になるにしろ、勝つ気があるのならば良い。だが、『勝たせてもらえたらいいなあ』という甘ったれた精神でセイジュリオに来るな」
「先輩。もう入学してるんですから、そこはたらればの話になります。現時点の問題ではありません」
 スィヴィアの一員であり、一学年のマルディ・ノーゼンが淡々と口にした。
 マルディの深い青色の瞳を見返して、クロルは腕を組んで顔をそむけた。怒っていることには変わりは無いようだ。
「タトエは輝石自体は奪われたけど、アラタメ先輩のサポートに入るタイミングの切り替えが早くて良かった。その点は評価できる」
 クロルが一方的に怒るだけでは、感想にならないと察したのか、アユナがまず今回の練習試合において認められるところを述べた。
 続けて、ロリカも話す。
「ソレシカもよくやった。一人でこちらを第一制限時間まで、押し切ることができるとは思わなかった」
「それに比べて、カクヤの動きは中途半端。ロストウェルスは指示を出すタイミングが遅い」
「シェンサイトさんの言うとおり。私は、もっと両方の動きを把握するべきだったわ」
 クロルのまたも厳しい指摘に、サレトナは素直に反省した。
 カクヤも初めてのセイジュリオでの対人試合だから、という言い訳ができないほど、自身が無様なリーダーであったことは承知していた。
「まあ。これから。伸びる大樹はゆっくりと、ただ着実に伸びるもの」
 ロリカの励ましによって、場は締められた。

第四章第十話



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