立ち直りを図るマルディをソレシカが再び食い止め、サレトナが場合に応じて魔術で全員を阻害する。その隙に、タトエはアユナの詠唱を妨害していた。ロリカはサレトナの魔術を解除することで手が塞がっているようだ。
カクヤはクロルを狙った。駆ける。
「連鎖爆撃!」
二度目の鎖魔術が跳んできた。だが、カクヤは避けずにあえて正面から鎖の防壁へ立ち向かっていく。
「乱火」
刀に炎を灯し、鎖を切断していく。しゃら、じゃらと音を立てながら鎖は一本、また一本と断ち切られていく。
「やるな」
初めて聞く、悔しさの混じったクロルの賞賛の呟きだった。
カクヤは勢いに乗ってクロルに横薙ぎの一撃を与えようとするが、背後からおぞましい気配に襲われた。いままで欠片も感じなかったことが不思議なほどの、巨大なる怪物だった。
「さようならシュトライカ。二度目はない」
気配を消して近づいたアユナによって、巨大な爪がカクヤに襲いかかる。カクヤは感じられる敵意に合わせて刀を振るうことで精一杯だった。
「美しいぞ! 我が弟よ!」
どこからか跳んできた、おそらくセキヤによる声を聞いたアユナは、とっても嫌な顔になる。
それがカクヤの首を救った。
「あの声、セキヤ先輩のだったな」
「言わないでください」
間隙逃さずに跳んでくる、サレトナの朔氷雪花がアユナの右肩を貫いた。痛みを覚えているのだろうが、両腕を広げ、アユナは対抗する。
「それでは皆様ご容赦を! 華雪の功!」
雪が、舞い落ちる。
最初は触れると溶ける雪片だった。だが、徐々に大きさと鋭さを増していき、痛みが倍増していく。
カクヤはアユナを取り逃した。
「星の演奏会!」
タトエが癒やしの聖法を放ち、減っていた仮想体力が取り戻されていく。
直後に、吹っ飛んだ。
タトエに鋭い拳が襲いかかり、防御する間も避ける間もなく、タトエは地面に転がることになった。
マルディは髪をかき上げてタトエに手を差し伸べた。
「おかえし」
タトエは握り返さない。マルディではなく、その後ろを見ている。
今度は、マルディが地に伏す番だった。ソレシカが遠距離から衝撃を放ち、距離を詰めると三連撃の斬突を繰り広げる。
再び、無音の楽団の空板に赤色の明かりが灯った。
タトエとソレシカはマルディではなく、次にロリカを狙いに走る。
カクヤももう一度、クロルに向き直った。できるのならば、あと一人は前半の間に落としておきたいと抗う。
「私による雪道百五十七選」
「ここから跳ぶは、連鎖爆撃!」
アユナの魔法により、視界の閉ざされたタトエとソレシカへ容赦なくクロルの鎖がぶち当たった。
スィヴィアの空板にも赤と黄色の明かりが一つずつ灯る。
そして、詠唱を終えたクロルをカクヤは最後の足掻きで斬り伏せた。無音の楽団にも、青い明かりがまた一つ灯る。
講評試合の前半が終了した。
>第六章第十話


