協和音を奏でる前に 第二話

 虚真世界トラストテイルの大陸の一つである、シルスリクでは村や街が各地に点在している。そして、それらの核となる四大都市もまた中央以南に存在していた。
 第一に西に位置する海洋都市トロット、次は東に位置する農耕都市コルクス、そして姉妹都市とも呼ばれている北寄りにある爛市メロリア、最後に中央に鎮座している絢都アルスだ。
 絢都アルスはその名に恥じない、格調ある都市整備がなされている。特に力を入れているのは、教育分野だ。アルスの学生は知識を蓄えて教養を得るのみに留まらず、剣術を初めとする武術に加えて、特殊な技術である、聖法、魔術、魔法の研究と修練も盛んであった。
 トラストテイルでは数多の神々が信仰されている。それらの下位概念である聖と魔によって、聖法と魔術、そして魔法という技術が進歩を遂げてきた。
 技術があるのならば、それらを利用した権力に関わる争いも起きてきた。しかし、いまは四大都市が結んでいる協定や条約により、戦火は長い時間眠りに就いている。それらにより、カクヤを初めとするトラストテイルの少年少女らは故郷を離れることが可能となった。また絢都アルスにあるセイジュリオで研鑽を摘むために受験することも、将来の布石の一つとして選べるようになった。
 未来はまだ定められていない。
 しかし、運命は確実に定められている。


第一章第三話


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