セイジュリオの前期修了の式は「中綴式」と呼ばれている。
校庭に出て、学長である申告の短い挨拶の後にアクトコンを初めとする課外活動で優秀な成績を残した者を表彰してから、中綴式は終わった。学生は解散して教室へと戻っていく。
カクヤが所属する二学年一クラスの担任であるヤサギドリは、成績表を配布すると、並んで座る学生達に向かってゆっくりと話し始めた。
「前期の間、よくがんばりましたね。夏期休暇の課題は授業ごとに数多く出されていると思います。私を初めとする教師達は大抵セイジュリオにいますので、何かありましたら、私たちを訪ねて、頼ってきてください。いつでもお待ちしていますよ」
にこりと穏やかな微笑を忘れずに付け足して、ヤサギドリは鐘と共に教室から去っていった。
セイジュリオにおける前期課程が終わりを告げたことに、学生は揃って気を緩ませる。普段は見ることのできない、弛緩した賑やかさが教室を埋めていた。
「サレトナ。件の迷惑な輩はもう来ていないのか」
「ええ。さっぱり」
「それならいいけど。心配しちゃったじゃない」
カクヤの前の席に座っている、いつもの女子学生三人組は相変わらず仲が良い。サレトナの身の心配を終えると、話題は夏期休暇に関することに移っていった。
「カクヤー」
「ん?」
清風が近づいてくる。そうして、カクヤの横に立つと、ルーレスとソレシカに加えて先ほどのサレトナ達も呼んで、清風は話し始める。
他の学生はもう帰る準備を始めていた。
「夏休みだけどさ。皆で一回くらい遊ぼうぜ」
「いいわね。でも、タイミングが合うかしら。私はロストウェルスまで帰郷しないと行けないし」
「そうだな。でも、しよう」
強引ではない。だけれど、最善を尽くすための行動を取ろうと言い切ることのできる清風のリーダーシップは、カクヤも尊敬している。
サレトナも素直に「そうね」と頷いた。
「具体的には何をするの?」
「そうだな。確か、アルスの祭は天月の終わりにいくつかあるだろ? それに行こうぜ」
「わかった」
「いいな」
「了解」
フィリッシュ、ロリカ、ソレシカがそれぞれ返答した。
清風が面白そうな祭を調べた後に、全員の登録されている宿り木に連絡するということに決まった。
「どうせだから、一年子も誘うか」
「アユナには繊細な配慮を頼む」
「はーい。じゃあ、俺はバイトに行ってきます!」
清風は席に戻る途中で振り向くと、敬礼を挟む。
「静観商路にある夏限定の鍛冶屋で働いてるから。いつでも来てくれよな!」
宣伝をすかさず入れ終えると清風は名前のごとく風のように去っていった。集められた用事も終わったので、ルーレスやロリカも帰宅することにしたようだ。
カクヤもソレシカとサレトナと並んで教室を出る。
「元気な人ね」
「ああ。いつも、すごいって思う」
カクヤが素直な感想を述べると、ソレシカはじっと見下ろしてきた。普段とは違う色の瞳にたじろいでしまう。
「どうしたんだ?」
「いや。俺は、カクヤが俺たちのリーダーで良かったなあって思っただけだ」
「持ち上げるなよ」
ソレシカと二人で笑っていると、サレトナも少しだけ遠くから見守ってくれていた。
昇降口でタトエを待つことにして、沈黙の楽器亭までの帰路を進むことになる。その時に当然、アユナと万理も揃っていた上にマルディも参加して、賑やかなことになるのはまだ、誰も知らない。
>第七章第十五話


