何かしらの破片を積み上げていきます。
いつか一つの大きな“何か”になることを祈って。
小説(文字事)みたいなもの
2024年9月1日(日曜日)
銀鈴檻
(カズタカとアルトー)
密かに、痛い。
カズタカは一通の請求書を見ながら頭を悩ませていた。
その請求書は住処にしている宿「調律の弦亭」から渡されたものだ。内容は食費の請求書になる。
これがまた、結構な金額だ。以前はそこまで請求されることはなかったのだが、竜族の剣士であるアルトーが仲間になってから、桁が跳ね上がってしまった。
三か月くらいは払えないことはないだろう。しかし、それ以降をどうするかの算段をハシンとつけなくてはならない。
アルトーは人形を取っているとはいえ、竜だ。人より大食らいなのは当然だ。
しかし、現実は無情だ。必要な分は差っ引かれる。
カズタカはその後姿を不安げに見つめる存在がいることには気づかない。
翌日、カズタカは仕事から帰ってきたハシンに食費について相談をした。
ハシンは納得している。
「まあ、仕方ないね」
「ああ。来ても構わないと言った、こちらの責任だ」
そこまで口にしたところで、話題の主であるアルトーが訪れた。
「ハシン。カズタカ。ごめん」
「気にしなくていいさ。でも、どうしたんだい?」
アルトーは背に大きな荷物が入った袋を持っている。机の上に置いた。
中身を見て、カズタカもハシンも沈黙した。野草や卵、爪など様々な収穫物がある。
「人の世界は、交換。俺はそれを忘れていた。だから、狩った」
アルトーは誇らしげだ。
「おい。これ、かなりの高級品だぞ」
「なるほど。アルトーにはこうしてもらえばよいわけか」
腰が引けているカズタカとは反対にハシンは微笑を浮かべて頷いていた。アルトーに向き直る。
「狩りは君の大切な仕事だ。これからも頼むよ」
かくして、一日だけでアルトーの食費という問題は解決したのであった。
イラストみたいなもの
感想みたいなもの
その他
2024年9月7日(土曜日)
「もどき」には蔑視的なニュアンスが含まれているのでしょう。
ですので、今月から「成瀬の物置き」の「もどき」を「みたいなもの」に変えました。
意味合いは変わらないというのに、印象が変わるのはどうしてでしょう。あくまでも言い逃れ、自虐的なニュアンスは逃れられないのですが、軽くはなっている気がします。
それとも、それも「気のせい」なのでしょうか。「もどき」の方が本質には近いというのに、逃げているのでしょうか。
そういったことを考えてしまいます。