特別な紅茶、というのは

 紅茶は飲みますか。
 湯気が立つほど熱い、香り高いストレート。ほんのりとした甘さとコクの広がるミルクティー。それとも、氷を入れて痺れるほどに冷やしたアイスティーなどなど。
 四季それぞれに味わい深い飲み物が、紅茶です。
 私は紅茶をきっかけにして一気に飲み物にこだわるようになりました。家にはコーヒーを入れるドリッパーに、カクテルのためのシェイカー、抹茶を立てるための茶筅などが揃っています。
 毎日、余裕のある時は飲み物を楽しんでいる私です。その中でも、紅茶は特別な飲み物として君臨しています。


 紅茶と私が出会ったのは、大分昔に遡ります。
 きっかけは『ローゼンメイデン』という作品です。二年ほど前に完全版が刊行されました。好きなキャラクターは水銀燈です。デザインも性格も、こちらが私の裏の好み。
 『ローゼンメイデン』には食事シーンが多く出てきます。その中でも、主人公の「真紅」というドールが紅茶を嗜むシーンは優雅で、またロマンティックでした。こちらの落ち着いた華やかさのある日常に憧れて、同時に紅茶という飲み物にもときめきを覚えました。当時は飲み物といったら麦茶や緑茶だったのですもの。
 そうして紅茶に憧れを覚えてからは、まずは近くのスーパーで二百グラムで三百円ほどの紅茶を購入し、紅茶を淹れる練習を始めました。
 最初はなかなかうまくいきませんでした。苦みが強い。それに加えて、香りを立たせるというのがいかに難しいことか。悩みつつも、まずは淹れる手順を覚えていきました。
 いまになると、もうお茶を沸かしてポットを温めて、温めたお湯をカップに注いでから流しに捨てて、そうして茶葉に熱湯を注ぐといったことを何も考えずにしています。紅茶を美味しく淹れるよりも、さらりと飲むことが目的になっていますが、また最初の頃のように美味しく淹れるための丁寧さを持つことも必要なのでしょう。それが優雅につながります。


 それほど、現在は、紅茶を日常として味わっていますが、休日は本当によく飲んでいます。ポット三杯分は淹れているのではないでしょうか。
 紅茶もそこそこカフェインが含まれていますので、紅茶を飲んだらそれだけ白湯もきちんと飲むように心がけています。飲み過ぎはよくないのです。なんであれ。
 主に飲むのはストレートでアールグレイが多いです。あとはフォートナム&メイソンのロイヤルブレンド。こちらは知り合いに二百グラムも頂いたので、優先的に飲んでいます。作業中に障ることのないオーソドックスな美味しさです。
 他には気分転換で、アレンジティーなども。果物をカットしたものと一緒に味わうことはお気に入りです。おすすめはみかんやぶどうですね。最近はお高いのが難点ですが、カットフルーツの詰め合わせなどでやりくりしています。
 冬は鍋に牛乳を張って、ロイヤルミルクティーを淹れることもあります。こちらはスターアニスといったハーブも少量入れて風味をつけると、なんだか気分がリラックス。
 とはいえど、毎回このような凝ったことはできません。ティーバッグも愛用しています。特に眠る前の一杯に便利です。


 たくさんの味わいができる紅茶。それでも「紅茶」という響きが持つ優雅さは失われません。
 紅茶の何を特別に感じるのでしょうね。
 個人的には、イメージかしらと考えます。
 紅茶といったら英国。貴族。そういった方々が嗜まれるものという印象が色濃く残っているのでしょう。
 私が『ローゼンメイデン』から紅茶に憧れたのも非日常感が大きくありましたので、わかります。いまはこれほど当たり前に紅茶を飲んでいるのに、もっと格別な「紅茶を味わう時間」があるのです。
 ゆったりと紅茶を入れて、場合によっては少しミルクを足して。サブレといった焼き菓子とペアリングしながら、味わう。場合によっては少し汚れてもいいかな、でも読みたいなというとっておきの本を読みながら過ごす。
 こちらの時間は心を大いに癒してくれます。
 湯気と香りを吸い込みながら、甘かったり苦かったりする熱い液体をこくりと飲みこむ。そうしてかじるサブレと、また紅茶を口にした時のすっきり感。
 それはやっぱり、幸せな時間なのですよね。
 紅茶は一時の緩みをもたらしてくれます。家ではなくとも、カフェなどでも。
 そう考えますと、紅茶は一種の防壁になるのかもしれませんね。大変な日々の中においての。


 

(初出 2024年4月15日)

    • URLをコピーしました!

    この記事を書いた人

    不完全書庫というサイトを運営しています。
    オリジナル小説・イラスト・レビューなどなど積み立て中。
    有償依頼も受付中です。

    目次