衛ときさらが彼岸を去る日が決まった。
その日は普段と変わらず薄暗い青と黒が入り交じる空の下で、彼岸の屋敷を背にして影生、貴海、弦、七日、ファレン、由為が並んでいた。衛は三年間が詰まった荷物から手を離し、向かい合う六人に頭を下げる。
「お世話になりました」
「それはこっちの台詞ですよ。また、何かあったら来てくださいね」
「来るような事態が起きないのが一番なんですけど」
その通りだ。何か、が起きるとしてもできたら楽しい理由で訪れたい。
「此岸で融通をきかせたいときは連絡ちょうだいね。私たちにできることだったら、力になるから」
「はい。三年間、ありがとうございました」
他に言葉を他に残すこともせず、衛ときさらは彼岸の舟着き場に向かって歩き出す。
長い、三年間だった。苦しいことも悲しいこともあったけれど、得るものも溢れるほどにある。
「寂しい?」
「うん。少しだけ。でも、俺がここで出来ることはもうやり終えたから」
後悔はない。彼岸の存在の重さを知り、此岸のあり方の醜さを知った。残されたやるべきことは、此岸と彼岸の繋がりを保ち、良好な関係を築くことだ。
雲の切れ間から、日が差してくる。
衛ときさらは珍しい光を受けながら歩いていった。
>貴海編プロローグ
花園の墓守 衛編エピローグ
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