雨月の十四日の金曜日の午後に、講評試合の閉会式を迎えた。
学長の申告による、あまり長々と続かない締めの言葉と学生達の拍手によって、全ての講評試合が終わったことを告げられる。
講評試合の目的は勝敗を競うことではなく、集団としての戦い方を学ぶことであるため、トロフィーはなかった。全てのチャプターに等しく、記念品として手の平の大きさ程度のメダルが贈られた。
校庭から教室に戻り、今後の説明を受けてから、会場の解体に全学生が参加することになった。
短期間であるというのに、大がかりな会場をよくも作れたものだとカクヤは感心していたのだが、解体の時に初めて仕組みを知った。
校庭で、ありふれた木材や石材を運びながら、隣を歩くルーレスにカクヤは言う。
「資材の全部に、魔法や魔術がかけられてるんだな」
三学年の学生が会場となった資材を媒介にしていた魔法や魔術を解いて、軽い資材に戻していく。それらを校庭の近くにある倉庫へ運んでいくのは、二学年や一学年の役割だ。
ルーレスも半身近くもある大きさの木材を抱えるようにして運びながら、頷いた。
「うん。クレズニさんは一目で仕組みを見抜いていたよ。まず、この資材を決められた場所に組み立てる。そうして、ある種の魔法や魔術をかけたら、その通りに変形する。これらはいわゆる『転変資材』だ」
「俺は一週間の間に壮大な工事がされてたのかと思ってたよ」
「一種の見本だろうね。魔法や魔術によって本質がごまかされるということの」
倉庫の前に着く。来年のために、収納する場所は決められているようで、三学年の学生が指揮をしてくれた。
カクヤとルーレスは指示された場所に木材を重ねて、まだ残っている資材を片付けに校庭へ戻る。だが、結構な学生が積極的に動いているためか、片付けるべき資材は殆どなかった。手持ち無沙汰の学生が集まるのも問題だからと、数名が指名される。指名された以外の学生は再び教室へ戻ることになった。
カクヤとルーレスも教室へ向かって校庭から校舎に向かって歩く。途中で清風とソレシカも見つけたので、合流した。近くでは、サレトナ、フィリッシュそしてロリカの三人も前を歩いていた。
講評試合の間のフィリッシュは、サレトナと距離を作っていた。それも埋まったようでなによりだ。三人には仲良くしてもらいたいとカクヤは願う。
「あとは、『試後祭』だな」
「そうだな」
会場の撤収が終わったら、今週のセイジュリオにおける授業は終わりとなる。
しかし、この一週間の間にセイジュリオまで来てくれた屋台の店主達にはまだ一仕事が残っている。当然、学生達もだ。
その一仕事とは「試後祭」と呼ばれている。講評試合の後に午後四時から午後七時までにかけて行われる、わかりやすく言ってしまえば打ち上げだ。健闘を讃え、唄い、踊り、食べる。
過去における戦勝の儀式を模した催しということにされているが、実際の起源は不明だ。解散した学生が目を離したところで勝手に馬鹿騒ぎをすることを防ぐためだとも囁かれている。
ともかく、一定の規律はあるとはいえ、セイジュリオで友人達と行事を締められるのは嬉しいことだ。
>第六章第十六話


