痛みも外傷もさほどないが、疲労を抱えた足で歩きながら最初の立ち位置に戻る。
スィヴィアと無音の楽団の得点は未だ隠されていた。空板は水色のまま点滅している。
結果の開示の前に、講評が始められるという。今回はヤサギドリが務めるようだった。会場の外側にある台の上に立ち、場を静めさせる。
「まず、スィヴィアの講評になります」
クロルが一度、身構えるのをカクヤは見た。プライドが高いことはこれまででよくわかっているので、評価されるというのはクロルにとって重要なことなのだろう。
「スィヴィアは前半は多彩な技法術を見せてくれました。特に、アユナ・トライセルさんとクロル・シェンサイトさんの連携は評価に値します。アユナ・トライセルさんの雪魔術は阻害が多いようですが、よく機能されていました。その隙をすかさず狙うクロル・シェンサイトさんの鎖魔術も、魔術でありながら物理としての攻撃が成立する点もお見事です。ただ、積極的に前に出られる方が少ないのは痛手でしたね。マルディ・ノーゼンさんも一撃の威力は大きく、狙いも正確ですが、攻撃の範囲が狭いのが今回は不足となりました。ロリカ・命唱さんがもう少し積極的に動いても良かったかもしれません。ただ、ロリカ・命唱さんは細かなところで欠けたところを埋めてくれていました。彼女をどれだけ自由に動かせるかが、今後の鍵となるでしょう」
スィヴィアへの評価が締められる。
カクヤはヤサギドリの講評を聞きながら、スィヴィアにあと一人、手強い盾がいたら戦局は大きく変わっていたのだと理解する。クロルとアユナを守れる存在がいるのならば、マルディはもっと単体で敵地に食い込むことが可能になり、ロリカも援護に集中できる。
ユユシが前衛に力を割いていて、あと一人でも遠距離阻害がいたら手強くなるのとおなじことだ。両方とも、あと一人だけでも適切な人材がいたら、戦力は大幅に増強される。
自分たちはどうなのだろう。誰が、何の力が欠けているのだろう。
ヤサギドリの無音の楽団に対する講評が始まる。
「無音の楽団は前回のユユシとの講評試合の反省を活かしたのか、迷いがない戦略を選んでいたことが高い評価を得ました。おそらく、サレトナ・ロストウェルスさんを優先して守ることにしたのでしょう。カクヤ・アラタメさん。タトエ・エルダーさん。ソレシカ・シトヤさん。こちらの三人の連携といった面では課題が残りますが、団結して一線を越えないように仕合うことができたのは賞賛に値します。サレトナ・ロストウェルスさんが、後方からの絶え間ない援護を行うことができたのも、スィヴィアが前線を越えられなかったためです。タトエ・エルダーさんはユユシとの講評試合に続き、最初からマルディ・ノーゼンさんに能力向上の聖法をかけるというのが、意外性もあって良い手段でした。ソレシカ・シトヤさんは二人を相手取りながらも、一歩も引かなかった点が立派でした。最後に、カクヤ・アラタメさん。リーダーの意地を見せてくれましたね」
ヤサギドリから向けられた笑みは柔らかく温かなもので、カクヤの胸がかっと熱くなった。恥ずかしさもある。照れもある。
だけれど、成長できたのだと誇らしい。
「揺らがず、ぶれずに前を向く。それはまとめるものとしてとても大事なことです。こちらも、あと一人か二人、全体を見てくださる遠中距離を兼ねた仲間ができたら、心強いでしょう。講評は以上になります」
拍手が起こる。
カクヤも手を叩いた。一人ひとりの戦いを見てくれて、欠けているものを指摘してくれるのはありがたい。
しばらくして、拍手が止んでから、点数が開示される。
まずはスィヴィアだ。もったいぶることはしないで、即座に獲得点が出た。
百五十。
次は、無音の楽団になる。対戦相手を落とした数は一人上回っているが、果たして結果はどうなるか。
こちらの獲得点は。
二百十。
最初はわからなかった。だけれど、点数を引いて、ようやくどちらが勝ったのか実感が湧いてくる。
無音の楽団は勝利した。
「内訳は!?」
クロルが声を上げる。
別の空板が現れて、詳細が表示された。
アーデントを倒したことによる加点は、四十点であり、ブレイブは三十点になる。そして、クールが五十点だ。
図らずも、クールが多いスィヴィアは無音の楽団よりも不利になってしまった。
クロルは眉をしかめて、点数を数え直してようやく納得がいったようだった。
リーダーである、カクヤとクロルが前に出る。遺恨がないことを示すために、一度だけ握手をした。
歓声に包まれながら、二組とも講評試合会場から退場をしていく。
祝いの声はそう簡単には、鳴り止まなかった。
戦歌を高らかに転調は平穏に 第十三話
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