成瀬の物置き 2026/September

何かしらの破片を積み上げていきます。
いつか一つの大きな“何か”になることを祈って。


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小説(文字事)みたいなもの

2026年9月1日

無音の楽団 Re:Praying

 教室に戻ろうとしたらとんでもない発言が聞こえてきた。
「第一回、カクヤに言わせたい台詞選手権!」
 当然ながら言い出したのは清風だ。手には紙で巻いた拡声器まで持っている。実際には声を大きくする効果がないことを祈りたいが、ロリカの風魔術などで声を遠くまで届けられるようになっていたら、たまったものではない。
「じゃあ、まずはフィリッシュから。どうぞ」
「えー。私はアラタメに言わせたい台詞なんてないけど、強いて挙げるなら」
 そこで一区切り。
「フィリッシュ様には敵いません。サレトナの隣はあなたのものです、かしら」
「なんというリリリズム! どこまで経ってもフィリッシュはロスウェルちゃんのことが好きだなあ」
 たとえ人差し指を曲げられることになろうとも、フィリッシュにはサレトナのことを譲る台詞は言わないことを決めた。一度でも口にしたら絶対に守らされる。そうなると、もうサレトナの隣には二度と立てないだろう。
「じゃあ、次。ソレシカ」
「まじっすか」
「マジです」
「違う違う、まじっすかって言ってもらいたい。似合いそうなんだよな」
 またも勝手なことを言われている。
 ここまで来たら全員の言わせたい台詞を聞いてから教室に入ろうと、壁に背中を預ける。待っている間も自分が言わないとしたら面白い台詞ばかり出てきた。
 右手で目を覆ってしまう。
「カクヤ? 目でも疲れたの」
「サレトナ。いまはまずい。声を出さずに黙って、十歩ほどここから離れるんだ」
「あの、何を言っているの?」
 頭の心配をされるのだがいまはそうとしか言えない。
「じゃあ、次! ルーレスはカクヤになんて言わせたい?」
「我が名はカクヤ・アラタメ。混沌と恐怖を司る者、かなあ」
「痛々しい台詞も似合いそうね」
 と、いうことだと手で指し示すと、サレトナもほろ苦く微笑んでいた。
「……なにか、楽しそうなことを話しているわね」
「全くだ。それで、もしサレトナが俺に言って欲しいことがあるといったら?」
「決まってるじゃない」
 だけど、サレトナは「言って欲しい台詞」をいくら訊ねてもはぐらかすばかりで教えてはくれなかった。
 サレトナにだったら、言って欲しい台詞なんていくらでも伝えられるというのに。

 久しぶりに楽しく書くことができました。
 カクヤさんはもてあそばれるところがとてもよいのです。


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