お借りしました。
三冠夏さん(@moru0101)
お名前をお借りしました。事後承諾失礼いたします。
阿遼介さん(@perokyan2tinta) 紫野麗司さん(@ran_1z) ジアさん(@uta_kkku_)
昼休憩は慌ただしい。弁当がないのならば食事を、食事を確保したならば場所を選ばなくてはならない。
志乃川古蝶の昼休憩は超過勤務に少し押されて零時十二分から始まった。その後に、昼食の約束を取り付けた三冠夏を探し出してから天照の外に連れ出した。前から気になっていた、開店したばかりのカフェが近隣にある。そこまでの道を歩きながら話しかけた。
「お話していたのは阿さんと紫野さんでしたね。今更ですが、遮って良かったんですか?」
「あの二人なら分かってくれる。まあ、美味しい炊き込みご飯について話していただけだから、また次にでも」
ここで古蝶の顔は遠大な荒野を見る猫の顔になった。
最近の男性は家庭的なのね。
感心する古蝶は知るよしもないが、三人の話題の発端は夏が先ほどの青年二人に白米を礼として贈ったためだ。そして、その礼をするきっかけは古蝶と夏の関係に関わりがあるのだが、夏がそれを古蝶に言うことはないため、三人は古蝶にとって料理好きというカテゴリに入れられた。
古蝶はパンプスを静かに鳴らして、新装開店したパン屋の裏路地にある、緑の屋根のカフェに入った。男性には敷居が高いかと一抹の不安があったが、内装は明るく北米風にまとめられていた。
窓際の四人席に案内されて、メニュー表を開く。時間がないため、古蝶はスコーンとローストビーフのサラダ、にんじんのポタージュのセットを選んだ。
「夏さんは何にします?」
「ライスボールは、おにぎりか?」
「おそらく」
「じゃあそれで」
夏はライスボール三種セットとフライの盛り合わせに、ビーフコンソメスープを店員に告げた。メニュー表が下げられる。
夏が冷やを飲む。そのときに沿った細いがしっかりした喉に目をやりながら、古蝶は言う。「次のお仕事は長期になりますね」
「そうみたいだな。妖魔の大量発生か……古蝶さんはどこを選んだ?」
「安全そうな遊園地跡です」
生気はあるが体力のない肆段の古蝶にはそのあたりが適当だ。夏あたりは前線に出て、サポートをしつつ討伐数に貢献するのだろう。
「わかった。なら、俺も同じところへ行こう」
え。
いえいえいえ。
「あの、夏さん。壱段でしたよね?」
「そうだが」
「だったら別の場所でもっと戦えるのでは……?」
恐る恐る訪ねると、夏のほうじ茶と古蝶のダージリンが運ばれてきた。店員に頭を下げた後に夏は不思議そうに首をかしげて言う。
「貴女と行動するが、何か問題でも?」
「問題は、ないですが」
「ならいい。あんな広い場所で、野営もするんだ。放っておけるわけがない」
でも。
これは仕事であって、守るべきは職員よりも平穏を生きている無辜の人たちだ。だから今回で古蝶が危険な目に遭おうと、優先すべきは事件を解決することなのに。
強い人の思考はよくわからない。
守られる、ことを嬉しく思う自分にも腹が立つ。
それから夏に二言、三言、話しかけられているあいだに昼食が運ばれてきた。手を合わせて食事を始める。
「あの、夏さん」
「はい」
「これが終わりましたら、ジアさんともお話をしてみたいんです」
以前から、夏の刀神という女神へ正式に挨拶をしなくてはいけないとも考えていた。どちらが婿になるか嫁になるかはまだ決まっていないが、少なくとも懇意の関係にはなる。
夏は丁寧だが勢いよく箸を進めて聞いている。
「あとは、夏が来る前に。きちんと夏さんとお出かけしたいですね」
この仕事が無事に達成できたら、それくらいのご褒美はあっても良いだろう。
夏の箸が止まる。古蝶のスプーンがポタージュを静かにすくい上げる。
とりあえず、まずはお仕事だ。
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