防人イベントでエヴァ:破パロ

こぎみかです。
趣味に走ったエヴァ:破パロになります。大丈夫な方のみ、どうぞ!
怪我描写にもご注意を!


 大侵寇が進む。滅殺せよと悪意のない純粋な敵意が行進し、行進してくる。
 それでも各本丸の活躍により戦況は安定の一途をたどっていたが、青桜と呼ばれる本丸にて前線に出ていた小狐丸の疲弊は深刻だった。審神者はまだ戦えるという主張をねじ伏せて、待機を命じた。
 代わりに三条の刀が奮戦していると聞いても、小狐丸の憂いは収まらない。こんな形では決して見たくなかった白き月、三日月宗近の心象風景から背を向けていた。
 その背中に、声がかかる。
「こんなところで何してるんだ?」
「……分かっているのに、聞くな。いまはおぬしの相手をしている余裕はない」
「結構な言い草だな」
 そう言いながらも楽しそうに、白き月を背にして鶴丸国永は首を傾けて、笑う。その余裕が小狐丸には信じられない。三日月と親しく笑い合っていたというのにどうして、何事もなかったように戦えるのか。
 違う。理解している。鶴丸は三日月の残した希望を潰えさせないように戦ってきているのだ。だからいまだって、怪我は自動修復されるとはいえどす黒い血痕の残る衣装のまま、小狐丸を訪れている。彼も伊達の一刀、衣装の汚れには敏感だ。
「主の命令とはいえ、あんたが本丸のどこにもいないなんておかしいと思ったからな。そういうことか」
 小狐丸は三日月に突き飛ばされて帰還させられた、境界の端に立っている。
 三日月が最後に姿を見せた場所で立ちすくんでいる。
「私は、三日月を取り戻すまで戦うと決めた」
「それは当たり前だろ。三日月を取り戻すかどうかなんてことで悩むような相手がこの本丸にいるか。……逃げたいなら逃げればいいだろ。手伝ってやるよ」
 鶴丸の手が伸びる。本丸がある境界の内側に、強く突き飛ばした。立ち止まれずに小狐丸の体が階段に崩れ落ちる。
「戦うと、決めた。私は戦うと決めたと言っているじゃろう!」
「そうだろうさ。だけどよ、いまそうしていじけていたって、三日月を取り戻せるわけじゃないだろう」
 鶴丸は今度は小狐丸の手首をつかみ、立ち上がらせる。そうして目の前の現実を突きつけた。
 広がるのは白い海。刀剣を生んだ、人を生んだ万物の母だ。さらに遠くは星すら見えない宵が滲んだ青と蒼が混ざり合う空だった。
 そしてその水平線に、優美さを残してぽっかりと浮かぶ。
 悲哀。空虚。
 ただあってくれと乞う、切なる願いの、白い月。
 美しい。残酷なまでに美しい。
 だだからこそ胸が引き裂かれる。
 いま暫定の近侍を務めている、一期一振は主から聞いたという。
『この空の下でいま私たちは戦っています。時間遡行軍が本当に三日月殿をを取り込んでしまったら、本丸の結界が壊れます。この本丸に苦もなくたどり着けるでしょうな』
「三日月が融合されちまう。それでもいいなら、さっさと逃げろよ」
 黙っていられるはずがなかった。
 一期一振の言葉も、鶴丸国永の叱咤も、なにより三日月宗近の託した想いを知っているからこそ振るわなくてはならない刀がある。
 主に逆らっても、伸ばすべき腕はここにある。
 小狐丸は立ち上がって主の、審神者のいる場所に向かった。


 戦況は有利に傾いてた。
 だが、決して熟達とはいえない青桜の本丸では猛攻による被害が徐々に広がっていた。
「左翼が崩れた!」
「大型の時間遡行軍が現れました!」
 報告を聞いて、一期一振は焦る。
「急がねば、本丸の結界が破壊されてしまう……!」
 三日月が身を賭して作り上げたのだから、いますぐに押し寄せることはないだろうが、危地にあることに変わりはない。
 出陣と防衛が急がれる。一期は近侍代理の権利を使い、審神者と一緒に部隊を代わる代わる編んでいくが限界が近づいていった。
「主……」
 審神者に呼びかけた。もとから口を聞くことのできない主とは知っているが、その背中には苦悩が滲んでいる。
 一期は自分が出るときが来たかと覚悟を決め、進言しようとした瞬間。だった。
「出陣させてください」
 昨夜の荒れ様とは違う、落ち着いた声だった。審神者も振り返る。
 そこには常のように落ち着き、乱れを払った小狐丸がいた。
「私を、出陣させてください」
「……なぜここに。貴方は、待機すると決めていたのでは」
 戸惑う一期に小狐丸は黒い小手を強く握り、真っ直ぐに金の瞳を射貫いた。
「一期一振。そしてぬしさま」
 途切れる。
「私は稲荷明神と三条宗近が相槌し、三日月宗近の夫……小狐丸です」


 

 目標は進攻する。滅ぼすためだけに、進む巨大なる一念が闊歩する。
 敵の一振りは空間を震わせて邪気により清められた結界を黒く染め上げる。びしびしとひび割れる音にも臆さずに、ただ前に前にと進む、青桜の本丸の刀剣男士。その心は決して折れずに希望だけが宿ってる。希望をつかむために強い風を泳いでいた。
 それでも絶望は容赦なく迫る。モニターに映る、巨大な大太刀。それらと目が合い、刀を振るう前に立ちくみ、だけれど。
 小狐丸は、白き月を背に飛翔する。
 その姿は小さき流星。やがては地上に落ちて燃え尽きる。
 眩惑の一閃は走り、小狐丸の刀が大太刀の腕を切断した。
「こぎつねまる!」
「待たせましたね、今剣」
 振り向いて、微笑む小狐丸にはもう自棄の様子はなかった。覚悟しかない。それを悟った今剣は強く頷いた。
「小狐丸殿……ご武運を!」
「ええ!」
 小狐丸はその後、戦った。何度も刀を振るい、跳躍し、腕を足を腹を頭を目を切り裂いた。その小さな白い嵐はどこまで続くか。鼓舞された他の刀剣男士も、押し寄せてきた暴虐の荒波を追い返す。
 勝利は遠い。だけれどつかみ取る。何を犠牲にしない。これ以上、大切な仲間を失わないために。
 三日月宗近を取り戻すために。
 その覚悟の下にて敵の波を押し返し、前進する。
 だがその歩みは嘲笑われることとなった。
 小狐丸の腹を突いたのは一槍。深く、抉られ、血が舞い散る。口から勢いよく赤が飛んだ。「っが、は……!」
「小狐丸!」
 鶴丸が名を呼んだ。揺蕩いかけた意識が、収束する。小狐丸は伏せた体をゆっくりと少しずつ起き上がらせた。
 赤い目を見開く。その白眼はすでに、黒く闇に染まっていた。
「三日月を…………返せぇえ!」
 人の形を保っていた腕が、足が、白い毛並みに覆われていく。かつて「優しい夕焼けを閉じ込めた瞳だなあ」と微笑まれた目に怒りだけを宿し、小狐丸はまた峻烈な嵐に戻っていった。
 敵を拒絶し、切り裂き、突き飛ばす。
 上げる雄叫びに一期一振は言葉を失った。
『小狐丸殿に、極とはいえこんな力が……?』
『いや……あれは、刀剣男士としての力を超えている』
 最初の一振りであり一期と同じく後衛に回っていた歌仙兼定が呟いた。同じ光景を見ていたどの刀も、敵すらも、突如現れた天狐の怒りに呆然とする。
『きけんです!』
 響いたのは今剣の声で、その焦燥感ある調子に歌仙は強い危機感に襲われた。
『やめたまえ、小狐丸! 刀剣男士に戻れなくなる!』
 それは助けの手だと小狐丸も分かっていた。
 だけど。
 私は、どうなってもいい。世界もどうなってもいいのです。ただ仲間とぬしさまは道連れにはできないから。
 私だけで。
 三日月は。せめて三日月宗近だけは。
 絶対に、助けます。
 小狐丸の玉鋼の意思をくじくことはできない。
 だから、主が告げたいと強く願っている言葉を察した一期一振は代わりに叫んだ。
『行きなさい、小狐丸殿!』
『一期一振!?』
『誰かのためではありません! 貴方自身の願いのために……!』
 直後、小狐丸の閃きは、大型時間遡行軍を破壊した。
 バラバラに崩れて消滅していく体に見向きもせずに、小狐丸は叫ぶ。
「三日月! どこですか!?」

(……だめ、だなあ)
 耳によく馴染んだ。鷹揚で、軽妙で、裏には哀傷が残る声が響いた。
 間違えない。間違えることのない三日月の声は、いつものようにあっさりと、全てを見守りながら自分を見捨てて話す。
(俺は、もうここでしか生きられないらしい)
「三日月!?」
(いいのさ、小狐丸。俺が消えてもまた新たな三日月宗近が励起される。……代わりはいるんだ)

「違う! 三日月は、私の三日月は貴方しかいません! だからいま……助けます!」
 白き月に向けて小狐丸は手を伸ばした。

 その結果は、まだ先の話。


    未分類
    良い! と思いましたらシェアをお願いします。
    ツイッターをフォローして最新情報の入手や交流を!
    不完全書庫

    コメント

    error: 当サイトは右クリックによる操作ができません。申し訳ありません。
    タイトルとURLをコピーしました